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天の岩戸


 
天の岩戸(前半)
 ここに速須佐の男の命、天照らす大御神に白したまひしく、「我が心清明ければ我が生める子手弱女を得つ。
 これに因りて言はば、おのづから我勝ちぬ」といひて、勝ちさびに天照らす大御神の営田の畦離ち、その溝埋み、またその大嘗聞こし召す殿に屎まり散らしき。
 かれ然すれども天照らす大御神は咎めずてのりたまはく、「屎なすは酔ひて吐き散らすとこそ我が汝兄の命かくしつれ。また田の畦離ち溝埋むは、地を惜しとこそ我が汝兄の命かくしつれ」とのり直したまへども、なほその悪ぶる態止まずてうたてあり。
 天照らす大御神の忌服屋にましまして神御衣織らしめたまふ時に、その服屋の頂を穿ちて、天の斑駒を逆剥ぎに剥ぎて墮し入るる時に、天の衣織女見驚きて梭に陰上を衝きて死にき。
 かれここに天照らす大御神見畏みて、天の石屋戸を開きてさし隠りましき。
 ここに高天の原皆暗く、葦原の中つ國ことごとに闇し。
 これに因りて、常夜往く。ここに萬の神の聲は、さ蝿なす満ち、萬の妖ことごとに発りき。
【訳】: もう一度、時代を分けた変災の内容を検討しよう。
 それまでに人為的な山野の乱開発や戦火その他による破壊によって、初めの頃に目的があって整備され耕された土地が、多く駄目になっていた。
 そのような所業も、おそらく一時的な戯れか、あるいはもっと良いことをするためであろうと放っておいたのだった。
 だが、そうしているうちに、ついに歴然とした事件が起きた。馬の皮を逆剥ぎにしたような格好をしてやってきた水と土を多量に含んだ天体が、環境破壊によって抵抗力をなくしていた地球に衝突したのだ。
 このために地上は泥で大地を洗ったような格好になったばかりか、地殻変動の影響は地球の深部にまで及び、清浄な地球の衣ともいうべきオーロラを織り成していた地磁場が消失してしまった。
 すると宇宙から射込む宇宙線は大気に水滴をつくり、濃厚な雨雲を形成した。このため太陽は隠れ、地上には雨が降り続き、世界は寒冷と暗黒のなかに置かれ、地上の生命は生命体地球の死と共に絶滅に瀕したのである。

天体の衝突が招いた太陽消失

「天の岩戸」の段では、かの一時代を終わらせた大変災の経緯の詳細と、死んだ地球を元の状態に回復するために執られた超科学的方法が語られる。
奇想天外な内容であるが、古代の黄泉帰り思想の底流を成す重要な記憶である。
ここで中核になる話は、「天の斑馬」に象徴される天体の落下と、それが引き起こした大異変である。
斑馬とは、死と再生、吉と凶の相反する状態を具有する禁忌の神馬と古代人の間では認識されていた。加えてこれには、水と土の混ざり合ったものの意味合いが込められている。
その逆剥ぎとはまさに、尾を引き近づく天体(彗星)を形容したものなのである。今から一万四千年ほど前、海水面が百メートル以上も一気に上昇したというデーターがある。
そして現在は、かつてより百四十メートルも上がっているというのだ。
通説では、氷河期が終わりを告げたためとされているが、それほどの水位の上昇を引き起こすだろうか。
それよりも、天体の運んだ大量の水が水位を極度に押し上げ、衝突とあいまったアトランティス島の海没がメキシコ湾流の流路を開き、ヨーロッパの氷河期を終わらせたのではなかったか。

 

大異変は、天体の引力や衝突により巻き上げられた物質による大洪水や噴火といった直接的な作用があるに加え、いま一つ、落下した天体の規模によっては、地核やマントル層に及ぶ歪みの影響により、地磁場消失ということも有り得たかも知れない。
古事記によれば、「忌服屋」と「神御衣」からオーロラが連想され、地磁場が導かれる。
これが「服屋の頂」すなわち電離層の外から落ちてきた「斑駒」天体のために駄目になることを、織り手の生産機能の死という寓意で表現しているとみられる。それが太陽の長期的お隠れに繋がった。
太平洋諸島の住民の間では、「最も暗い時代」とか「毎日が夜の時代」と称される時代があったとされ、「ポポル・ヴフ」の伝えでも、大異変の後で寒さが始まり、太陽が失われたと伝える。

古事記では「身禊」からこの段までで、一大異変を多角的に説明している。
まず「身禊」では人類の再出発のためにひどい汚染状態を浄化しておかねばならないとして水を正当化し、次に幼いスサノヲの行状に譬えて、地上の守護精神の能力不足、抵抗力不足で異変が訪れたとし、最後にその事件が天体の衝突によったことと、その影響が長期間太陽を隠すほどの規模になったことを語っているのである。

 

 
天の岩戸(中半)
 ここをもちて八百萬の神、天の安の河原に神集ひ集ひて、高御産巣日の神の子思金の神に思はしめて、常夜の長鳴き鳥を集へて鳴かしめて、天の安の河の河上の天の堅石を取り、天の金山の鉄を取りて、鍛人天津麻羅を求ぎて、イシコリドメの命に科せて、鏡を作らしめ、玉の祖の命に科せて八尺の勾玉の五百津の御統の玉を作らしめて、天の児屋の命フトダマの命を召びて、天の香山のマヲシカの肩を内抜きに抜きて、天の香山の天のハハカを取りて、占へまかなはしめて、天の香山の五百津の真賢木を根掘じにこじて、上枝に八尺の勾玉の五百津の御統の玉を取りつけ、中つ枝に八尺の鏡を取りかけ、下枝に白和幣青和幣を取りしでて、この種々の物は、フトダマの命フトミテグラと取り持ちて、天の児屋の命フトノリト言ほぎ白して、天の手力男の神、戸のわきに隠り立ちて、天のウズメの命、天の香山の天の日影をたすきにかけて、天のマサキを蔓として、天の香山の小竹葉を手草に結ひて、天の石屋戸にうけ伏せて踏みとどろこし、神懸りして、胸乳をかき出で、裳の緒を陰に押し垂りき。
 ここに高天の原動みて八百萬の神共に笑ひき。
【訳】: 神々は宇宙船(UFO)の航法と同じ原理を駆使して時空プログラムを組み替える技術を使い、地球の存在する時空を転移する方法を採った。
 では、UFOの製造法、超時空航行に至る経過とは如何なるものであったか。

 神々は、宇宙空間に集まって、コンピューター(思金)の監視のもとに、超音波のつくる特殊な状態のなかで、元素周期律表の端(安の河の河上)にある堅い鉱石(堅石)と、多量に産する金属(金山の鉄)を合金にし鍛造(イシコリドメ)して、輝く結晶体(鏡)をつくり、いっぽう宇宙機母船の設計図(玉の祖)をもとに、多分岐した勾玉状のものを統一して威力の出るエンジン(五百津の御統の玉)をつくり、ボディーと電気系統の組みつけに関しては、多量の輝く材料を丸くプレスしたもの(マヲシカの型の内抜き)に、やはり輝く材料でできたケーブル(ハハカ)などで裏側(占へ)を電装整備し(賄ひ)、威力の源泉となる中心柱(マサカキ)の上部(初枝)に先程のエンジンを、中程に結晶体を、下部(下枝)に白や青のにぎやかなものを取り付けた。
 この装置は、コントロールルーム(太・満・倉)にある操縦制御系統と連動していて、運航の合い言葉(太祝詞)となる手続きを踏ませると、強力な力場(手力男)が時空の壁(岩戸)に発生し、回転系(渦・目)の動きは力場(日影)を兆型(襷)にして、時空の分断域(目・裂・鬘)を周りに形成して、笹の葉を結んで輪にしたような輝きを発生させ、虚ろな箱(うけふせ)のような時空転移のトンネルの上で共振する(踏みとどろこし)ようになると、やがて船体は元の時空の縛り(面の紐)を超えて新時空にジャンプして行くのである。

 この宇宙船と同じ仕組みが地球に適用された結果、時空の相転移に伴う多数の法則(八百万神)の洗い替えが終わり、宇宙船地球号は新たな時空プログラムの軌道に乗せられたのである。


死からの再生・世の建直し(地球蘇生)と時代の開始

  

地球を死から蘇らせる超科学技術

 古事記「天の岩戸開き」の節は、生命体地球を、災疫に満ちた存在の状態から脱出させ、生命力を再生する超科学的手段とその実際を示している。それは、宇宙人の乗物UFOの飛行原理と同じ原理を用いた機構によって執り行われたとみられる。
インドの古文献マハーパーラタにはイオン推進であるらしい宇宙機の説明がなされているが、古事記のそれは、ある種の力場の回転により現時空を超越してしまうというものだ。
その用法は、決して遠距離の短時間航行にあるのでなく、現状の存在状態からの離脱と、理念の改善のためであった。
言い換えるなら、存在状態の変革機構なのである。プログラム時空論的には、時空ジャンプとすべきものだ。
しかもこの機構の説明に要した長い叙述が一文にまとめられていることに、他文にない特異性があり、明らかに特別重要な知識群であることを物語っている。
 この節に登場する主役は、もはや地球人類ではなく、地球外知性となる。だが、この情報をもたらした者とは、地球人類の祖先である以上、接点の再生の時期のタイミングに偶然もしくは選ばれて行きあわせた者であり、それも、本来なら秘密裏であるべき復元作業の現場に立会っていた者であろう。
さらに、驚異的な科学力の半神半人的宇宙人の横で逐一教唆を受けていたとさえ考えられるような製造行程の描写である。


UFOの構造、稼動原理

 さて、この節の解釈はど原文対訳が忠実にできた個所はない。神名の意味は対訳と照合すれば意味が把めるはずである。だが、重要な留意事項を次に掲げておこう。
 オモヒガネ(思金)は考える金物のことで、宇宙文明の底流をなす利器、コンピューター(ハードウェアーのことである。この神がタカミムスビの神の子であることは、コンピューターの設計思想が宇宙運行の原理を模倣したものであることを示している。これは拙宇宙モデルが古代的観点から妥当であることの証拠である。
 アメノヤスノカハの「ヤス」はたくさんの物質のことで、全体で物質資源のことであり、この河上とは元素周期律表の(最も重い元素の側の)上位であることや、物質生成の場の付近の意味にもとれる。「カタシハ」は、堅い石片のことであり、アメノカナヤマの意味するどこにでも見かける山ほどにある金属の中の特に「マガネ」とともに鍛人アマツマラ(交転)の意味する融合炉にかけ、イシコリドメ(石凝り留め)の鋳型に入れて、カガミ(輝身)の示す輝く結晶体を造るというのである。
「香山」(カグヤマ 輝く山)は、輝くたくさんの材料、「マヲシカの肩」は、丸く力ある船体(鹿は古来より神の乗物であるとされる)の型、アメノハハカは細長いケーブル(ハハは蛇の意「「ウラナヒマカナヒ」は「占ひ」ではなく「裏綯ひ賄ひ」で、内装整備するの意となる。
「玉の祖の命におはせて……アオニギテを取り垂でて」の部分は、まさに空飛ぶ円盤の内部構造からエンジン始動の様子までを示すかのようである。


ヤサカノマガタマノイホツノミスマルノタマは、たくさんに分極した曲玉が円筒ないし球内に収まった多極巴えの外観をしたもので、これがパワーを発生させる中心動力(エンジン)になっているという意味である。

 ここまでで装置の部材からハードウェアまでを具体的にしているわけであるが、その次は運行に併うソフトウェア的な説明となる。「フトダマ」、「フトノリト」、「フトミテグラ」の「フト」とは、電子機械や電気そのものと解せ、それぞれ、機械船、メカ的司令手順、メカの充満した部屋(電子制御室)を示すと考えられる。
既に出てきた「フトマニ」は予測(占ひ)のためのメカ的表示画面であり、すでに別のところで出てきた「タケフツ」とは、武力メカすなわち戦車や球電兵器を示すという具合に解釈される。

 また、「アメノタヂカラヲの神…天の岩戸にうけふせて」の部分は、まさに空飛ぷ円盤の稼動状態を示すのであるが、何やら、アダムスキーが金星人から示されたという「アダムスキー文字」の説明をするかのように思えた。(図2・5参照)

まず、エンジンが操作手順に従って、ある程度稼動した頃、「アメノヒカゲ(日陰)をたすきにかけ」に言うように、文字中の兆型(X字型)で示される力場(の空域)をつくり、「アメノマ(目もしくは間)サキ(割き)をカヅラ(鬘)とし」すなわち、「目のような形に防御された領域を作り」、新しい存在状態を機体の周りに発生するというわけである。
つまり、アダムスキー文字のシンボルは、機体やエンジンの形状を語るのではなく、UFOが稼動して二次的に発生した力場の有様なのである。「鬘」というのは頭を保護するかぶりもののことで、この話が民衆に記憶付けされるために、マサキノカヅラという樹名がつくられているが、実際はとてつもない代物の連想記憶用言葉なのである。
また、葛城の山というのは奈良盆地の西のとりまきの生駒山系をいうのであるが、これはまさに西からの悪疫を阻止する防壁の山並と考えられたものであった。
 さらに「アメノウズメ(渦目)」はこのような力場稼動の有様を総括するものであるが、大変なのはこれが「うけふせて」にいわく、うつろな箱のような天の岩屋戸の上に載っかる格好で、きらびやかに振動しているというのである。(「うけふせて」はうつろな箱の上に置くという意味)これは図2・5中の眼型の下にある箱の図柄に示されているではないか。
また、黒い部分(まだら)は何となく半開きの岩戸そのものを示すようである。つまり、天の岩屋戸の外観さえ描いているわけだ。そこは禁忌である意味の白黒のまだらにもなっている。
このように、アダムスキー文字と天の岩戸物語は、対になって、ようやく意味するところが把めてくるのである。
 現代の様々な目撃報告の研究からUFOは異次元航法をとるという情報がもたらされているが、これは以上の言葉の解釈を妥当なものにすると思われる。「天の岩屋戸」は宇宙機が航行していく次元のトンネルとみてよい。
次元のトンネルはトーマス・ペアデンに言わせれば、虚状態で実現するといい、古代人が空虚な箱にみたてたのも的を得ていると思われる。そして、「ふみとどろこし」に示されるように、力場が共鳴を起し、「神がかりして」に示されるように、機体が励起状態にあって始めて、時空の縛り(面のひも)を解くことができるというのである。
 また、この箱の図柄やいくつかの紋様に過不足のあるピンターダ文字(図2・6)は、多分、非励起状態にある宇宙機の説明図ではなかろうか。

眼型のまわりの種々の草文字は、「八百萬の神」として対訳中では宇宙人と訳したが、次元飛躍現象を生起するために用いられる物理法則と解した方が望ましいかも知れない。とにかく、図2・5、図2・6は宇宙機の動作原理を説明したものと捉えられる。
拙宇宙モデルでは、このような現象は、プログラムの慣性的な成りゆきを乗り替えていくというやり方の一環で把握できることを申し述べておく。(拙時空論参照)
さらに当時(1970年代のUFOブームの頃)は、これ以外に金星人の残した靴の跡というのもあった。これは地球が宇宙機になる機構がどこにあるかを示すものとして、想像を馳せたものであった。そこにも目型の機構が示されている。その場所とは、奇しくも謎の消滅事件を起こすバミューダトライアングルの海域であるらしいことが分かる。




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